平沢進とそのギター

 平沢進といえばギターが嫌いなタルボ使いとして有名。そのギタースタイルは本人がかつて出演していたラジオ番組「テクノ実験工房」で述べているように「ロバート・フリップキング・クリムゾン)の編集」である(コピーではないところが重要)。
 
 特徴としてはかなりディストーションがかかったギターサウンド、余り速弾き(この場合いわゆる「ピロピロ」を指す)をせず音を長く延ばす、開放弦とオクターブフレーズの多用、低音弦と高音弦の移動が激しいなどが上げられる。アンプはROLANDのJC−120、エフェクターにはProcoのRATを使っていたようだが、近年BOSSのGT-6に切り替えている(2007年5月号のKeyboard magazineより。恐らくプリセットの音色をほぼそのまま使っているものと思われる。以下は先の記事における平沢の弁

「私はアンプから出るギターの音が嫌いで、現在はステージのアンプを廃止しています。そのため、このエフェクターは直接PAミキサーにつながれています。さまざまなエフェクトが可能ですが、今回はディストーションしか使っていません」

 
 彼のギターにおけるベスト・ワークスを四つ上げるならば、
私はSHOP・MECANO限定で発売されている『big brother - 可逆的分離態様』、

平沢がギターでゲスト参加したヤプーズの『ダイヤルYを廻せ!』、

シングル版の『ASHURA CLOCK』、

亜種音TVで配信されている『ASTRO-HO-06』

を上げる(もちろんオリジナルアルバムにも『達人の山』や『王道楽土』、『CHEVRON』『Wire Self』等良いものは沢山ある)。
 平沢の憎いところは、どんな仕事でも手を抜かないところだ。ヤプーズに限っては、6曲目『ヒステリヤ』のギターソロを聴くためだけでも入手する価値がある(いや、もちろん戸川純の活躍も素晴らしいのだが)。『ASHURA CLOCK』にはシングル版と(Discommunicator)の副題がついたアルバム版がある。PVなどに使われているのも後者のアルバム版であり、前者を聴くためにはもはや「太陽系亜種音」購入ぐらいしか方法がないが、曲自体のアシッド感、感想のギターソロのテンション含めてこの二つのASHURA CLOCKは全くの別物である。個人的には前者が圧倒的におすすめである。
 『big brother - 可逆的分離態様』と『ASTRO-HO-06』はそれぞれ既に発表していた曲のリメイクだが、こうした「再利用」のウマさはもはや平沢の代名詞と言ってもいいだろう。この2曲では、どちらもギターが「再利用」にあたって重要な役割を果たしている。